国民税制研究 第4号【EVシフトと走行距離税への転換、米私大への内部留保課税導入】

国民税制研究 第4号icon_1r_24

国民税制研究第4号の発行によせて

EVシフトの動きが加速しています。化石燃料などを必要としないEV(電池自動車)全盛の時代に突入し、道路財源を確保するためには、これまでの自動車燃料税から自動車マイレージ税/課金(走行距離税/課金)への移行・転換が待ったなしです。与党の2019年度税制改正大綱にも、走行距離税への転換にむけて、自動車関連税制の抜本的な見直しに着手することがうたわれました。

国民税制研究4号(以下「本号」)掲載の【論説】「EVシフトと道路財源の今後」では、サブタイトル〝自動車燃料税から自動車マイレージ税/課金への転換と人権〟にあるように、自動車税の抜本改革のあり方について、日米比較を中心に、市民の移動の自由・公道通行権や、走行情報(デジタルデータ/ビッグデータ)にかかるプライバシー権の保護など「人権論」を含め包括的に分析しているのが特徴です。プライバシー権その他の市民の人権抜きの走行課税案が浮上してくることへの警鐘を鳴らしています。また、税と課金(利用者負担金)のどちらを選択するのかも、市民の訴訟上の権利尊重の面で、重い課題であることを指摘しています。

わが財務省が2018年9月3日に公表した法人企業統計によると、いまや、わが国企業(金融・保険業を除く全産業)の2017年度の内部留保は、446兆円に上りました。第2次安倍内閣が発足する前の2011年度から164兆円も増加しました。内部留保への適正な課税で、賃上げや投資を促すべきとの声も強いわけです。

本号【研究ノート】《図説》「留保金課税法制入門」は、経済学や財政学、税法学などで語られてきている法人企業の「内部留保金課税」について、日米比較において、税法学の視角から、やさしくイメージし、図説したものです。〝営利法人の内部留保課税とは何か〟を日米比較で包括的に理解するのに役立つのではないかと思います。わが国では、内部留保課税の問題は、営利法人を中心に論じられてきました。しかし、無税スキームのなかで巨大化する非営利公益法人の過大な内部留保も問われています。

本号【論説】「トランプ税制改革:私立大学内部留保課税の導入~米私大の過大基本財産投資所得への課税理論と課題」は、アメリカで新たに導入された有名私大の内部留保所得への課税制度を詳細に分析したものです。2018年1月1日に施行されたトランプ税制改革法(TCJA)では、私大が抱える基本財産を投資して得た果実(リターン/投資所得)に対し、1.4%の税率で規制税を課すことにしました。この課税実施の背景には、公器であるはずの有名私大が、自らのキャンパスをタックスヘイブン(無税地帯)のようにみたてて、スタークホールダーである学生をそっちのけで、得意の金融工学を駆使し錬金・内部留保の極大化に走る私大経営陣に対する連邦議会の強いいらだちがありました。

本号【対論】「アメリカ私大のエンダウメント/基本財産の投資の実際」は、わが国の実情を含め、アメリカ有名私大の〝蓄財〟実務を知るうえで参考になるのではないかと思います。

以上のように、国民税制研究第4号(本号)は、オリジナルティのある現代的テーマを取り扱っています。税の研究者や実務家が、グローバル化の荒波と日本税制の立ち位置の一端を知るうえで一助となるのではないかと思います。

国民税制研究所(JTI)のホームページに機関誌『国民税制研究』第4号をJTIのホームページにアップします。今後とも、会員および一般市民の皆さまにJTIの支援を切にお願いする次第です。

国民税制研究 第3号                   【共謀罪(テロ等準備罪)と税理士 特集】

国民税制研究 第3号pdf-icon

第3号は、《共謀罪(テロ等準備罪)と税務専門職》について特集を組んでいます。

共謀罪(テロ等準備罪)は、今(2017)年6月15日に成立、7月11日に施行されました。テロ等準備罪は、組織犯罪処罰法に、「6条の2」〔テロリズム集団その他の組織的な犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯遂行の計画〕のタイトルで新たな規定を設けるかたちで導入されました。刑法典に盛られているわけではないことから、組織犯罪処罰法はあたかも〝国家緊急事態法〟のようだとの指摘があります。テロ等準備罪の施行により、2人以上の者が、4年以上の懲役・禁錮の罪で、法別表(メニュー)に並べられている犯罪(277)については、その犯罪に合意・準備した段階で処罰できることになりました。今後、当局(司法警察)は、テロ等準備罪を使えば、「犯罪の前の犯罪」を問えることとなります。

本号の「【対論】税理士も共謀罪を問われる」では、共謀罪(テロ等準備罪)がどのようなかたちで税務専門職に適用になるのか、法律にあまり強くない税理士にも分かり易く対話を展開しています。

「【論説】日米比較:共謀罪(テロ等準備罪)と税務専門職」では、アメリカの税務専門職・納税者への共謀罪適用事例の分析を中心に論及されています。わが国での税務専門職への共謀罪(テロ等準備罪)適用の今後を占ううえで、非常に示唆に富む内容です。

「【研究トート】質問応答記録書制度と税務調査の可視化」も、税務専門職には、有益な論考です。この制度は、課税庁が争訟になった場合の証拠資料集めを狙いとしています。

「【対論】リモートアクセスによる租税犯則調査とは」も税の実務に役立つ内容です。キャッチボール形式で、一連の電子データの査察調査権限強化策について、法律にうとい税理士にも分かり易く対話を展開しています。

「【税務ニューズ】国税庁、e-Taxでマイナンバー不要に舵を切る」も、血税浪費の公共事業である個人番号カードの問題点を鋭く指摘しており、有益な論考です。

国民税制研究 第2号【オーストラリア税制 特集】

国民税制研究 第2号pdf-icon

2015年JTIオーストラリア税務実務視察研修報告書/オーストラリア現代税法入門塾:Report of JTI Mission to Observe Australian Tax Practice/Modern Australian Taxation Law Primer

国民税制研究所(JTI)は、2015年9月19日(土)~9月26日(金)まで、オーストラリアの税制および税務実務について研究するために、海外視察研修を実施しました。オーストラリアは、税額票(tax invoice)方式の消費税(GST)を採用するとともに、逆進対策には軽減税率ではなくゼロ税率を幅広く採用しています。加えて、税理士(tax agent)制度もあり、かつ番号制(TFN、ABN)を採用しています。今回、オーストラリアに赴いたのは、こうした同国の税法制の特質や運用の実情をつぶさに学び、グローバルな視座から日本が抱える税制や税務実務上の重要な課題に対応するためのヒントを得るためです。

国民税制研究第2号は、この2015年9月にJTIが実施したオーストラリア税務実務視察研修の成果を盛り込んだ研究報告書です。内容的には、◆オーストラリアの税制と税務手続の概要、◆税額票方式の消費税(GST)とゼロ税率を採用した逆進対策、◆複数番号制による番号付き納税者情報の保護対策、◆共通番号や番号ICカード不要のオーストラリアの電子政府構想(myGov)、◆電子申告(e-Tax)より進化したスマホ申告(myTax)、◆納税者が主役の税務専門職制度、◆納税者本位の課税庁(ATO)のサービス体制、◆税務専門職法人の視察、◆二階建ての年金制度などからなります。

オーストラリアの税法制や税務実務については、これまで、日本語で書かれたしっかりした研究書や実務書もない状態でした。第2号は、『オーストラリア現代税法入門塾(Modern Australian Taxation Law Primer)』のような内容になりました。本号は、わが国の税の学会や実務界にとり現代オーストラリア税法制や税務実務を精査するうえで貴重な資料となるものと確信します。

《Contents in English》
®JAPAN TAX JOURNAL No.2
Kokumin zeisei kenkyu

Report of JTI Mission to Observe Australian Tax Practice
【Preface】
 Koji Ishimura
【Welcome Speech】
 Mandy Shircore
【Chapter I】 Lecture: An overview of  the Australian tax system and tax procedures
 Justin Dabner
【Chapter II】 Lecture: An overview of  the Australian GST system
 Van Le
【Chapter II-A】 Article: Election to use simplified GST accounting methods
【Chapter III】 Article: How the TFN and ABN operate in Australia
【Chapter III-A】Article: A closer look at e-Government: An Australian-Japanese      comparison
【Chapter IV】 Lecture: Modernisation of the ATO’s taxpayers’ service: myGov and myTax
 Graham White
【Chapter V】 Article: Tax agents system: Recent reform of the tax profession in Australia【Chapter VI】 Report: Visit to Crowe-Horwath (Aust) Pty Ltd in Townsville
【Chapter VII】 Lecture: Superannuation
  Kim eikle
【Editor’s Note】
 Shozo Tsujimura
【Materials】  ● Tour timetable  ● List of tour participants

© JAPAN TAX INSTITUTE, JTI
(Kokumin-zeisei-kenkyusho)
Yokohama, Japan

国民税制研究 創刊号

国民税制研究  第1号pdf-icon

税のあり方については、国民サイドに立った議論ができるフォーラムが必要です。
国民税制研究所(Japan Tax Institute)は、機関紙「国民税制研究」(Japan Tax Journal)を発刊し、独創性や新規性のある研究論文や見解を電子ベースで公表するフォーラムを設けました。
研究者はもちろんのこと、税の実務家や大学院生など幅広い分野の方々に参加いただき、新たな「税研究の道」を拓いていきたいと思います。